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  • 股関節の痛みと治療法

股関節

監修 杉山肇先生 神奈川リハビリテーション病院整形外科部長 日本股関節学会理事

関節鏡視下手術とは?※クリックすると詳しい説明がご覧いただけます。

  • 活動的なライフスタイルを取り戻す
  • 股関節鏡視下手術とは
  • 股関節のしくみと機能
  • 股関節インピンジメント
  • 関節唇の断裂
  • 関節軟骨の損傷
  • 関節内遊離体
  • 保存治療の選択
  • 股関節鏡視下手術の選択
  • 股関節インピンジメントの治療
  • 関節唇断裂の治療
  • 関節軟骨損傷の治療
  • 股関節鏡視下遊離体除去術
  • リハビリ

活動的なライフスタイルを取り戻す

慢性の股関節痛を経験されている方の中には、関節の問題に直面するには、まだ自分は若すぎると感じておられる方も多いでしょう。しかし実際には、50歳未満の多くの方々がさまざまな股関節の問題を抱えています。従来、これらの病気の多くは、単に有効な治療法がなかったという理由で治療されてきませんでした。ところが、股関節鏡視下手術の技術の進歩に伴い、現在では治療ができるようになってきました。実際に、侵襲(手術によって生体を傷つけること)の少ない関節鏡による手術は、通常の切開手術よりはるかに傷口が小さいため、術後の痛みが少なくなります。したがって、患者さんの回復は早まり、これまで通りの運動やライフスタイルにより早い時期で復帰することが期待できます。

股関節鏡視下手術とは

膝や肩の関節鏡視下手術の治療を世界中の患者さんが受けられるようになった今日、手術器具の発展により、股関節の関節鏡視下手術も治療に広く用いられるようになり、股関節痛に苦しむ人々に対する治療の選択肢となりました。
股関節鏡視下手術は、さまざまな症状に適用できます。主なものとしては、関節唇断裂の治療、股関節インピンジメント、関節軟骨の損傷、関節内遊離体の除去などです。また、頻度は少ないですが、その他にも変形性股関節症や靭帯の損傷、股関節の不安定性、関節滑膜の炎症や損傷などを治療する際に関節鏡が用いられる場合もあります。これらの症状のすべては最終的に関節症に至る可能性があり、股関節鏡視下手術は患者さんにとって有益な選択肢です。

股関節のしくみと機能

股関節は、ボール状の大腿骨頭(球状)とソケット状の寛骨臼(骨盤の基部の臼状のくぼみ)からなり、人体で最も体重の負荷がかかる関節です。健康な関節であれば、大腿骨頭は寛骨臼にぴったりとはまります。
靭帯は球と臼をつなぐ役目を果たしており、この二つをしっかりと支えます。大腿骨頭と寛骨臼の表面は関節軟骨として呼ばれる滑らかで丈夫な組織によって覆われています。その関節軟骨が骨を保護しているので、骨は滑らかに動くことができます。寛骨臼の周囲の縁は関節唇と呼ばれる繊維性軟骨の層で、衝撃を吸引する効果があり、大腿骨頭をしっかりと支えています。
股関節のその他の表面は、滑膜と呼ばれている薄く滑らかな組織で覆われています。この組織は、潤滑油のような微量の滑液を分泌して、骨が互いにこすれ合うときに生じる摩擦を抑えます。

股関節インピンジメント

股関節インピンジメント(衝突)は、大腿骨頭頚部(大腿骨頭下のくびれ)と寛骨臼の縁の骨が衝突して起きる障害です。ここに衝突が起きると、走る、座る、屈むといったような、日常的な活動で股関節を曲げるとき、大腿骨と寛骨臼の縁がこすれ合い、関節に極度の痛みを引き起こします。大腿骨と寛骨臼の縁の骨とが過剰に接触した結果、関節唇に損傷を起こすことがあり、時間が経つにつれて変形性股関節症を引き起こすこともあります。
股関節インピンジメントはスポーツマンタイプの男性に多くみられ、運動競技や重労働などにより、インピンジメントから起きる鼠径部の痛みをさらに悪化させる可能性があります。長時間、同じ姿勢で座っていることも、症状をさらに悪化させることがあります。股関節インピンジメントから生じる痛みを保存的(手術をしない)治療で軽減できない場合、股関節鏡視下手術を勧められる可能性があります。

関節唇の断裂

関節唇は、大腿骨の骨頭部(球状)が収まる寛骨臼(くぼみ)の周囲の縁に沿った繊維性軟骨の層です。この軟骨が関節のクッションとなり、大腿骨を正しい位置に保ちます。関節唇の断裂は、けがや股関節インピンジメント、あるいはその他の関節疾患による変性から生じることがあります。
場合によっては、関節唇の断裂は症状を引き起こすほど重傷でなく、外科手術による治療が必要でないこともあります。しかし、時として関節が固まる、または引っかかるような感覚の症状や、股関節や鼠径部の痛みを引き起こします。
関節唇の断裂は身体診察で発見しにくいことが多く、診断を確定するために造影剤を注射してMRI検査をすることがあります。診断が確定すると、股関節鏡視下手術を勧められる可能性があります。

関節軟骨の損傷

関節軟骨は股関節の大腿骨骨頭と寛骨臼の表面を覆う層で、大腿骨骨頭と寛骨臼が互いに動くときに損傷を起こさないようにクッションの役割をします。関節軟骨は、走ったり跳んだりする激しいスポーツや、股関節インピンジメントによる摩擦の結果、あるいは日常的な摩耗により、断裂したり、損傷を受けたりすることがあります。
関節軟骨が損傷を受けると、断裂した断片がしばしば関節内に突き出て、股関節を曲げたときに痛みを引き起こします。さらに、表層下の骨は関節の摩擦から保護されなくなるので、治療せずにいると、最終的に関節炎が起こります。関節軟骨の損傷は、その他の股関節のけがに関連して起こることが多くあります。関節唇の断裂と同様に、診断を確定するために造影剤注射によるMRI検査が必要になる場合もあります。診断が確定すると、関節鏡視下手術を勧められる可能性があります。

関節内遊離体

関節内遊離体の除去には、股関節鏡視下手術がよく行われます。遊離体は、転倒、自動車事故、スポーツ関連のけがなどの外傷や、変性疾患から多く発生ます。断裂した関節唇が絶えず関節軟骨をこすると、破損して断片となって遊離し、関節内に入ることがあります。遊離体は、関節に引っかかりを生じさせる場合があります。
一部の股関節の症状とは違い、遊離体は最新のX線技術で比較的容易に発見できます。診断が確定すれば、股関節鏡視下手術で遊離体を除去することができ、通常は股関節痛が著しく軽減します。

保存治療の選択

股関節痛を治療する場合、何らかの手術を受ける前に、保存治療を選択されることもあります。

理学療法

股関節の筋肉のバランスをとるために、運動プログラムが提供されることがあります。多くの場合、これによって股関節の位置が改善され、痛みが軽減します。

抗炎症薬*

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、一時的に股関節の炎症や痛みを軽減する効果があります。

ステロイド薬*

NSAIDで痛みが抑えられない場合、場合によって、ステロイド薬(プレドニゾロンやコルチゾンなど)の注射が行われる可能性があります。

* ただし、すべての薬物にはリスクがありますので、医師の指導の下で服用しなければなりません。

股関節鏡視下手術の選択

保存療法がうまくいかなかった場合、股関節鏡視下手術を検討します。これは、股関節の痛みのために、あきらめていた活動的なライフスタイルを取り戻すための積極的な方法です。

股関節鏡視下手術により以下の効果が考えられます。

  • 疼痛の軽減
  • 股関節の安定性の改善
  • 関節内遊離体の除去
  • 断裂および損傷の修復
  • 変形性関節症の発症を遅らせる
  • 人工股関節全置換術の時期を遅らせる
  • QOL(生活の質)の改善
  • 日常生活活動を快適にする

股関節インピンジメントの治療

股関節インピンジメントの治療では、骨切除機器を使用して、大腿骨頭頚部または臼蓋縁の衝突する部分に形成された骨の出っ張りを削ることで、骨と骨の衝突を解消します。手術中や手術直後に、手術担当医は股関節の可動域を検査します。

関節唇断裂の治療

この手術では、関節鏡用の骨切除機器または電気メスを用いて、断裂した組織を除去して、損傷を受けた関節唇のエッジを滑らかにします。場合によっては、この方法で関節唇を修復することができます。またこの手術では、糸付きのアンカーと呼ばれるインプラントを骨に打ちこみ、股関節唇を縫合することにより治療を行う場合もあります。

股関節軟骨損傷の治療

関節軟骨損傷を治療するには、関節鏡用の骨切除機器を使用して損傷した組織を除去するか、電気メスを使用し、損傷のある軟骨を滑らかにして、股関節をスムーズに動かせるようにします。場合によっては、マイクロフラクチャーと呼ばれる治療が必要となります。この手術では、関節の露出した骨に小さな穴をたくさん開け、出血および凝固を誘発し、新しい組織を増殖させます。研究により、この増殖した新しい組織がやがて滑らかで丈夫な軟骨組織になることがわかっています。

股関節鏡視下遊離体除去術

遊離体を取り除くとき、まず関節鏡を使って関節内の遊離体を観察し、遊離体の数と位置を確認します。それから、鉗子を使用して遊離体を摘出するか、電気メスを使用して遊離体を確実に除去させます。

リハビリ

股関節鏡視下手術後のリハビリの内容は、患者自身の股関節の状態によって異なります。あなたのリハビリにどのような方法がよいかを知るには、整形外科の専門医に相談してください。

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